教育基本法お茶を濁すな
密室「教育再生会議」の提言報告と教育基本法審議状況について考えてみたい。
まず、教育再生会議「いじめ問題への緊急提言」について各紙が社説で論じている。
『対症療法には限界(日経)』
『提言に強制力はなく、実効性もはっきりしない(東京)』
『緊急提言は現場の声をどれだけ反映しているか疑問だ。会議の公開をあらためて求めたい(東京)』
『自ら命を絶つなど問題の深刻さを考えれば、苦しみながら登校し、いじめられている子どもたちが、安心して学校を休める仕組みをつくることが第一ではないだろうか(沖縄タイムス)』
『教師と子どもに罰を与えて脅かすことは、いじめの「対症療法」にすぎない(北海道新聞)』
と、いずれも提言に否定的、ないし再考を求める論調だ。調べた範囲では肯定的とらえたものはない。
なぜ現場の声、いじめられた人の声が届かないのか。教育再生会議がお膳立てに終わるか、真価を発揮するのか、早くも問われている。
一方、危機感を強く表明しているのが全日本教職員組合だ。その談話として次のように述べている。
『看過できない重大な問題を持つものであり、これが押しつけられれば、いじめ問題の解決に逆行する危険性すらもつものといわなければなりません。』
『教育再生会議の、子ども不信、人間不信ともいうべき子ども観、人間観の貧しさが根底にあると言わざるをえません。』
『いじめをのりこえる力は、子どもたちのなかにあります。この力を大いに引き出さなければなりません。ところが、「提言」の立場では、その力を押しつぶしてしまうことになりかねません。』
『「提言」から人間らしいあたたかさを読み取ることは、残念ながらできません。』
『教育再生会議に対し、「提言」の抜本的な再検討を強く求めるものです。』
今日12月3日には日本教育学会でシンポジウムが行われる。各報道機関は内容を報道してほしい。そして国会は専門家の意見を真摯に受け止め、全体の合意が得られるまで論を尽くしてほしい。このままでは将来に禍根を残すことが必至だ。
日程を優先して「お飾りの府」となるか「良識の府」となるか、参議院の存在意義が問われている。
各報道の中で毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/closeup/
教育再生会議「いじめ」緊急提言 急浮上「社会奉仕」
は良い記事を書いている。この記事に限らず署名記事が多いことにも好感が持てる。
「つづき」は上記と関連記事の案内です。
http://www.zenkyo.biz/html/menu4/2006/20061130193832.html
【談話】2006/11/30 『教育再生会議「いじめ問題への緊急提言」について』
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20061129MS3M2900629112006.html
社説2 いじめ緊急提言、にじむ苦渋(11/30)
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20061130.html#no_1
社説(2006年11月30日朝刊)[いじめ緊急提言]子どもと向き合う環境に
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?j=0032
社説 いじめ対策*悩みを共有する方法を(11月30日)
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/closeup/
教育再生会議「いじめ」緊急提言 急浮上「社会奉仕」
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=main&NWID=2006113001000747
2006年(平成18年)11月30日 教育基本法改正成立へ 参院委で公聴会開催を議決
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=IBR&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2006113001000359
2006年(平成18年)12月 1日 教育委員会改革で法改正 首相「あるべき姿定める」
http://www.asahi.com/politics/update/1130/007.html
ゆとり教育見直し提唱 教育再生会議第1分科会 2006年11月30日12時28分
http://www.asahi.com/politics/update/1130/001.html
教育再生会議「心の成長」策提唱 「30人31脚」など 2006年11月30日06時15分
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20061130AT3S3000F30112006.html
不適格教員の排除徹底・教育再生会議
http://www.jtu-net.or.jp/
教基法徹底審議求め共同声明 4野党参院国対委員長(11月30日)
http://www.zenkyo.biz/html/menu4/2006/20061130193832.html
【談話】2006/11/30 『教育再生会議「いじめ問題への緊急提言」について』
2006年11月30日 全日本教職員組合 教文局長 山口 隆
教育再生会議は、11月29日「いじめ問題への緊急提言」(以下「提言」)を決定、発表しました。いじめによる自殺が後を絶たず、胸をしめつけられるような不安と心配が父母・国民のなかに広がっています。教職員は、直接教育にたずさわるものとしての自覚をもとに、子どもの成長・発達を助けるという、その職務を全力をあげてすすめなければなりません。
全教は、その立場から、これまでも、いじめ克服のとりくみに努力するとともに、いじめ自殺問題が大きな社会問題となってきた11月21日には、教職員、父母・国民のみなさんへむけて、「いじめを克服し、子どもを人間として大切にする学校と社会へ、力をあわせてとりくみましょう」という石元巌中央執行委員長のアピールを発し、この問題の国民的解決をよびかけてきました。
いじめ問題の解決は、文字どおり国民的課題であり、それぞれの立場から、とりくみを提起することは重要です。しかし、今回の「提言」は以下に述べるように、看過できない重大な問題を持つものであり、これが押しつけられれば、いじめ問題の解決に逆行する危険性すらもつものといわなければなりません。
第1は、子どもに対する厳罰主義ともいえる対応です。
いじめは人としてやってはならないことであり、いじめた子どもに対して、その誤りを厳しく指摘し、いじめをやめさせることが必要であることは、言うまでもありません。しかし、いじめている子=悪、と決め付けてすむほど単純な問題ではなく、いじめ、いじめられの関係があるきっかけで逆転することをふくめ、子どもたちの関係を解きほぐす入念な指導が求められる問題であることを、教育現場は痛いほどわかっています。このことをふまえ、私たちのアピールでは「いじめている子もまた苦しんでいます。その苦しさを、その子の内面をくぐって理解しつつ、克服にむけて行動することをうながしましょう」と述べています。
しかし「提言」は、「見てみぬふりをする者も加害者」としたうえで、「問題を起こす子どもに対して、指導、懲戒の基準を明確にし」「社会奉仕、個別指導、別教室での教育」などをおこなうとしています。子どもを「被害者」「加害者」の単純な二分法で見ることそのものが問題です。また、子どもたちの中には、いじめの事実を知っていて苦しみながらも、さまざまな圧力を感じて言い出せない子もいます。その子を「見てみぬふりをする加害者」と規定してよいのでしょうか。しかも、「懲戒」を強調して、他の子どもと引き離したりすることが果たして教育的対応といえるのでしょうか。また、「社会奉仕」はそもそも自主的、自発的なものであるはずです。しかし、「提言」は、これを強制することをもって、「懲戒」とする立場にたっており、それは、「社会奉仕」を子どもに苦役を課す道具にするという発想です。こうしたことが現場に押しつけられれば、子どもに対する人間的なあたたかいまなざしを注ぎつつ指導を強めるという、いじめ問題の解決のためにもっとも大切にされなければならないことが、ないがしろにされ、子どもたちへの「懲戒」をふりかざした脅しにも似た対応が強調されかねません。
第2は、教職員に対しても厳罰主義といえる対応を提言していることです。
「提言」は、「教育委員会は、いじめにかかわったり、いじめを放置・助長した教員に、懲戒処分を適用する」として、東京都などにならって、それをせよ、と述べています。もちろん、教師がいじめに加担したり、助長したりすることなど、断じてあってはならないことであり、言語道断です。私たちは、福岡県筑前町で起きたいじめ自殺についての談話の中でも「今回とりわけ重大なのは、マスコミ報道等によれば、教師がいじめを誘発する言動をおこなっていたとされていることです。どんな場合であっても子どもを守らなければならない教師が、「いじめ」に実質的に加担するなど、絶対にあってはならないことです。」と、その立場を明確にしています。
しかし、いじめの実態は、担任の目が届かないところで起こる場合が多く、事実がなかなか明らかにならない状態が長期にわたって、事態を深刻にしてしまうこともあります。「提言」では、こうした事態をも「いじめを放置した」とされかねません。ここには、一体だれがそれを判断するのかという重大問題があります。「提言」は、「教育委員会は」を主語にした文脈で述べており、判断主体は教育行政ということになります。いじめは教育現場で起こる問題であり、現場の判断こそ最優先されなければならないのではないでしょうか。しかも、「提言」が言う東京都の例をみれば、この問題は、「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定」にもりこまれており、わいせつ行為や公金横領などとならんで「児童・生徒へのいじめ」があげられているのです。そのうえ、この「処分の量定」は、「免職・停職」とされています。教育における指導をふくむ問題を、明らかな刑事事件等と同列に扱うことが、果たしてよいのでしょうか。提言はこのやり方を「全国の教育委員会で検討し、教員の責任を明確に」と述べていますが、それがいじめの解決に積極的に働くのでしょうか。「処分」をふりかざして現場教職員を脅しつけるようなやり方が広がることが強く危惧されます。いじめ問題の解決には、学校で働くすべての教職員が、それぞれの立場から子どもにあたたかい目を注ぎつつ、実態を正確に把握するよう努め、学校の持つすべての力を集め、いじめの解決にむけてとりくむことが求められますが、「提言」の立場では、これに逆行しかねません。
子どもに対しても、教職員に対しても懲戒を中心とした厳罰主義的対応をおこなうことは、いじめの陰湿化と隠蔽化を助長しかねません。これでは、いじめ問題の解決に逆行してしまいます。
第3は、責任を学校と教職員、家庭と父母に一面的に帰し、教育行政の責任を不問にしていることです。
いじめ問題を解決するうえで、子どもの成長・発達を助けるという職務を持つ教職員が責任を負うことは、当然です。また、家庭や父母にまったく責任がない、とも言えません。
しかし、教職員は長時間過密労働のもとで、子どもに向き合いたくても、その時間さえとれないという苦悩のなかにいます。まして、いじめに直面し、この克服にとりくむ教職員の心労は、はかりしれなく大きいものです。文部科学省や教育行政は、そうした学校には特別に教職員を配置するなど、これを支援するべき立場にあります。しかし、「提言」は教育行政の条件整備については、まったくふれていません。これでは、学校と教職員の「自己責任」で解決せよ、と突き放しているに等しいものです。
また「提言」は、「保護者は、子どもにしっかりと向き合わなければならない」と述べていますが、父母も、「格差社会」の進行のもとで、長時間労働や低賃金のもとにおかれ、これを理由とする離婚なども増加し、バラバラにされてきています。こうした事態をつくりだした背景に、「構造改革」路線をすすめてきた自民党政治の重大な責任が横たわっています。この問題に言及することなく、「子どもと向き合え」などというのは、きわめて無責任な言葉ではないでしょうか。
この現場に対する冷淡さと父母のくらしに対する冷淡さで、いじめ問題が解決するとでも思っているのでしょうか。はなはだ疑問といわざるをえません。
第4は、いじめ問題の重大な背景をかたちづくってきた文部省・文部科学省のゆきすぎた競争教育についてなんら言及されていないことです。
いじめ問題の大きな背景に、国連子どもの権利委員会からも2度にわたって厳しく指摘された過度に競争的な教育制度があります。これが子どもたちに、多大なストレスを与え、いじめの温床ともなっています。教育基本法をないがしろにし、積年の「競争と管理」といわれる教育政策をすすめてきた文部科学省の責任は重大です。しかし、「提言」は、この競争教育について一言もふれておらず、文部科学省の責任にも言及していません。これでは、問題の根本的な解決とはならないのではないでしょうか。
以上、いくつかの問題を指摘しましたが、この「提言」には、教育再生会議の、子ども不信、人間不信ともいうべき子ども観、人間観の貧しさが根底にあると言わざるをえません。いじめをのりこえる力は、子どもたちのなかにあります。この力を大いに引き出さなければなりません。ところが、「提言」の立場では、その力を押しつぶしてしまうことになりかねません。
いじめ問題の解決の前提は、子どもたちの、本当は人間らしく生きたいという願いを探り当て、人間的なあたたかいまなざしを注ぎつつ、とりくみをすすめることであると考えます。しかし、「提言」から人間らしいあたたかさを読み取ることは、残念ながらできません。
この「提言」が学校現場に押しつけられるようなことがあっては、いじめ問題の解決はますます困難になるのではないでしょうか。
教育再生会議に対し、「提言」の抜本的な再検討を強く求めるものです。
http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20061129MS3M2900629112006.html
社説2 いじめ緊急提言、にじむ苦渋(11/30)
意気込みはよく分かる。しかし内容に新味は乏しく、どこまで生かされるかも心もとない。教育再生会議がまとめた「いじめ問題への緊急提言」について、こんな受け止め方をする人が多いのではないか。提言は多様な対策を盛り込んでいるが、もとより決め手はなく、いじめ問題にまつわる苦渋がにじんでいる。
提言は、いじめ問題に「社会総がかり」で取り組む必要があるとしたうえで、(1)いじめを見て見ぬふりをする者も加害者だと徹底指導する(2)問題を起こす子どもを別教室へ引き離すなど毅然(きぜん)と対応する(3)教育委員会はいじめに関与したり放置・助長した教員に懲戒処分を適用する――などを列挙した。
加害側の別教室教育など具体的な部分もあるが、総じて、これまで何度も繰り返されてきた対策の焼き直しという印象は否めない。また、今回は加害側への出席停止措置を明記することは見送ったが、過去にはそこまで踏み込んだ提言もあった。
たとえば、臨時教育審議会は1986年の第2次答申で「事態の解決のために社会全体の取り組みや協力が必要」とし、「生徒等に対する出席停止の措置」に言及した。95年には当時の文部省の「いじめ対策緊急会議」が「いじめの傍観も許されない」などと指摘、やはり加害側の出席停止も状況次第で必要とする報告をまとめている。
こうした積み重ねにもかかわらず、悲劇が後を絶たないのがこの20年間だった。結局は教委や学校が子どもの現実を直視し、できることから機敏に対応していくしかない。それを怠っているのであれば、どんな提言も空回りするばかりだろう。いじめ対策は「言うは易(やす)く行うは難し」の典型ではあるが、できることは必ず見つかるはずだ。
もっとも、現場がいかに熱心に取り組んだとしても、対症療法には限界があろう。いじめは学校空間そのものの息苦しさに起因する面があり、大人社会のありようも反映している。今回の提言は家庭や地域の責任も強調しているが、地域社会のきずなが緩み、家族の姿も急速に変化するなかで、その教育力を回復するのは容易ではない。この機に、問題の本質に迫る議論も深めたい。
http://www.tokyo-np.co.jp/sha/
(2006/11/30) 社説 いじめ緊急提言 現場へは有効なのか
安倍晋三首相直属の教育再生会議が、いじめ問題で緊急提言した。加害にかかわった子どもや教師への懲戒を打ち出したが、教育現場に有効だろうか。いじめ予防の手だてこそ求められている。
小中高校でいじめを苦にした子どもの自殺が相次ぎ、深刻な社会問題になっている。自殺の連鎖は断たなければならない。
教育再生会議が「学校だけに任せず、社会総がかりで取り組む」と、緊急提言した理由は分からないわけではない。
池田守男座長代理が「学校、教員、教育委員会、社会全体への提言だ」と述べ、安倍首相は「実行できることは実行に移す」と表明した。しかし、文部科学省が先月、いじめの早期発見・対応を通知し、四十四の点検項目を示したばかりだ。緊急提言と文科省の施策との関連はどうなるのか。提言に強制力はなく、実効性もはっきりしない。
提言の特徴は懲戒措置を打ち出したことだ。「問題を起こす子どもの指導、懲戒の基準を明確にし、毅然(きぜん)と対応する」よう学校に求め、社会奉仕や別教室指導を挙げている。
しかし、恐喝や傷害など明らかな刑事事件は別として、言葉やしぐさによるいじめの多くは見えにくい。簡単に懲戒措置を取れないところに真の問題があるのではないか。
最近のいじめ研究では、いじめはクラスという閉鎖社会で起き、いじめっ子といじめられっ子の立場も状況で変わり、弱者だけでなく優等生もいじめ対象になる。首謀者などを認定することは難しく、安易な懲戒だと子どもを傷つけることになる。
警察や裁判のような扱いをするのは、問題のある子どもを教育的に訓練し育てる「訓育」という教育の本旨からもはずれる。
提言は、いじめにかかわったり、放置・助長した教員に懲戒処分を求めているが、関与の程度を判断すること自体が難しいのではないか。
提言の言うように、いじめ問題は、学校と家庭、地域一体となった取り組みが必要だ。だが、教育再生会議が志向する学校選択制は地域社会を分断したり、外部評価制度は教師に数値目標を課し協力を難しくさせる心配があり、提言に逆行する。
いじめ防止には教師増員や予算措置も欠かせないのではないか。緊急提言は現場の声をどれだけ反映しているか疑問だ。会議の公開をあらためて求めたい。
教育再生会議は英知を集めて教育の立て直しを考えるのが本来の目的である。いじめ予防策も含めて、腰を据えた議論をしてほしい。
http://www.okinawatimes.co.jp/edi/20061130.html#no_1
社説(2006年11月30日朝刊)[いじめ緊急提言]子どもと向き合う環境に
いじめを受けた児童・生徒の自殺が相次いでいる中、政府の教育再生会議が、緊急提言をまとめた。「すべての子どもたちにとって、学校は安心、安全で楽しい場所でなければなりません」と始め、八項目を提言した。
基調は、いじめた子どもの指導、懲戒の基準を明確にするとして、社会奉仕や個別指導などを例示、いじめにかかわったり、放置した教員に対して懲戒処分を適用するなど、全体としていじめた側の責任を厳しく問う姿勢だ。
だが、自ら命を絶つなど問題の深刻さを考えれば、苦しみながら登校し、いじめられている子どもたちが、安心して学校を休める仕組みをつくることが第一ではないだろうか。
いじめは絶対に許されない。見て見ぬふりをするものも加害者であるという指導を徹底する。教師は子どもと触れ合い、どんな小さいサインも見逃さないようにする。保護者は子どもとしっかりと向き合わなければならない。提言はそう指摘する。
その通りだが、本来、自ら考えて取り組むべき責任を強調しているものの、なぜ責任を果たせないのか、機能しないのか、根本的な問題点は示していない。
いじめを解決するための定型のマニュアルはない。だが、第二十六回全国中学生人権作文コンテストで最優秀賞に輝いた伊禮美朱紀さん(伊平屋中一年)の作品は、いじめの芽を摘む示唆に富んだものだ。
いじめの対象になるのを恐れ、いじめグループに加わっていたが、突然、いじめに遭う。グループに再び誘われるが勇気をだして拒否する。その体験から転校生に「一人じゃないよ」と声を掛け、いじめについて先生、クラスで話し合い、みんなが仲良くなった―というものだ。勇気をもてる家庭で育ったことや、話を真剣に聞いてくれた先生、クラスメートがいたことなど、伊禮さんにはプラスに働いたのであろう。
肝心なことは、いじめられている子どもたちを救い、立ち直る環境を、大人たちがどう整えるかではないか。
家庭崩壊、地域崩壊など、子育て環境の悪化で自分を受け止めてもらえない子どもたちが増えている。教師も、じっくり子どもたちと向き合う時間がとれないのが現状だ。
学校を安心、安全で楽しい場所にするため、学校、教育委員会、保護者らに指示をだすのは誰でもできる。しかし、指示される側は、簡単にはできない厳しい状況にある。だからこそ、子どもたちと向き合えるような条件をつくることが、大事ではないか。
http://www.hokkaido-np.co.jp/Php/kiji.php3?j=0032
社説 いじめ対策*悩みを共有する方法を(11月30日)
「いじめに毅然(きぜん)とした対応をとる」として、政府の教育再生会議が緊急提言をまとめた。
いじめ自殺が相次ぐ一方で、いじめを隠す教育委員会や学校の実態が浮き彫りになったことが背景にある。
政府が対策を打ち出すのは、愛知県の中学生のいじめ自殺を受け、旧文部省の「いじめ対策緊急会議」が一九九五年に報告書をまとめて以来だ。
ただ、毅然とした対応を求める再生会議の提言は、十年以上前の報告書と同様だ。報告書が実効を挙げなかったのは、現場の取り組み不足もあろうが、いじめ対策の難しさを物語る。
提言を受け、文部科学省はいじめ対策を具体化する。学校現場や父母の意見を十分に踏まえ、実効ある対策を練り上げなければならない。
再生会議の議論では、「毅然とした」措置の一つとして、加害者側の子どもの「出席停止」を提言に盛り込むかが検討されたが、見送られた。
いじめを理由に子どもを出席停止にすることは、義務教育の小中学生の学習権を奪う懸念があるからだ。
これに代わって、提言に盛り込まれたのが、「出席停止と同じ」(義家弘介同会議担当室長)といえる別教室での指導や社会奉仕活動への参加だ。
だが、子どもを学級から一時的に隔離したからといって、いじめが根絶できるものではないだろう。
子どもが仲間はずれになるのが嫌で、いじめる側に回るなど、いじめは複雑な性格を持つ。
社会奉仕の「罰」を与えることで、いじめはなくなると考えているのならば、再生会議の認識は甘過ぎる。
いじめ対策には、教員の指導力向上が欠かせない。福岡県では教員自身がいじめに加担したケースもあった。これを教訓にして、同会議は、いじめへの加担だけでなく、放置した教員も懲戒処分にすると踏み込んだ。
いじめを隠さずに向き合うことは必要だ。しかし、教師が処罰を恐れて、いじめ探しに躍起になることが、教育の正常な姿だといえるだろうか。
教師と子どもに罰を与えて脅かすことは、いじめの「対症療法」にすぎない。
提言が指摘する通り、学校の相談体制の充実や父母の協力、情報の公開なども必要だろう。
しかし、提言は、具体的な施策につなげる道筋までは示していない。これでは、提言が絵に描いたもちに終わりかねない。
いじめの実態は深刻化している。実際にいじめ対策を担うのは学校現場の教師たちだ。
いじめに一人で悩んでいる子どもや教師も多いはずだ。学校や父母、地域を含めて、悩みを広く共有し解決に向かう方法を考えてはどうか。
http://www.mainichi-msn.co.jp/eye/closeup/
教育再生会議「いじめ」緊急提言 急浮上「社会奉仕」
◇消えた「出席停止」
いじめの社会問題化を受け、政府の教育再生会議(野依良治座長)が29日発表した緊急提言は、いじめをした児童・生徒に対し「毅然(きぜん)とした対応」を学校側に求めた。「社会奉仕、別教室での教育」も一例として掲げたが、一時は検討された「出席停止」は最終段階で消えた。打ち上げ花火に終わらせず、子どもの悩みを受け止める態勢作りにつなげられるかは不透明で、いじめによる自殺で子どもを失った遺族らは厳しい視線を送っている。
「出席停止といっても、その子の面倒を誰が見るのか。緊急避難だけでは解決にならない」。陰山英男委員(立命館小副校長)は再生会議終了後、記者団に強い調子で出席停止措置を批判した。
原案段階で検討された出席停止は、最終案で社会奉仕と個別指導、別教室での教育という3点に切り替わった。出席停止を主張していた「ヤンキー先生」こと義家弘介委員は「別教室もある意味では出席停止だ」と述べ、委員間の認識の違いが浮かび上がった。
再生会議のメンバーは10月25日、いじめ自殺の起きた福岡県筑前町を現地調査し、いじめ撲滅を訴える再生会議の緊急声明を発表した。約1カ月で今度は提言として具体的に踏み込んだ理由を、池田守男座長代理(資生堂相談役)は終了後の会見で「(いじめが)エスカレートしている現状を踏まえた」と説明した。
教育基本法改正案をめぐる国会審議は、いじめ自殺や「やらせ質問」に野党の追及が集中。首相官邸サイドも「国民、教育界へのアピール」(塩崎恭久官房長官)を求めた。
必ずしもいじめ問題に焦点を当てていなかった再生会議だが、今月21日に完全非公開で開いた運営委員会が、緊急提言取りまとめのスタートとなった。
文部科学省などの出向者が集まる内閣官房の再生会議担当室は、いじめ問題への考えられる対処方法をリストアップして提示した。義家氏は再生会議の発足当初から、出席停止の厳格適用などいじめる子どもの教室からの隔離を主張。これをもとに27日の会合で原案が示され、担当室は各委員に個別に意見を提出するよう依頼した。
ただ、出席停止は批判が強く後退。29日の全体会議直前に示された最終案に、唐突に社会奉仕が浮上した。運営委員の一人は毎日新聞の取材に「社会奉仕は議論したこともない」と不満を漏らした。
中曽根内閣の臨時教育審議会は86年に「社会奉仕の心の涵養(かんよう)」を提言。00年には森内閣の教育改革国民会議が「奉仕活動を全員が行う」ことの検討を掲げた。いずれも「憲法が禁じる苦役につながる」との批判で日の目を見なかったが、安倍晋三首相は自著で「大学入学の条件にボランティア活動を義務付ける」と記す。山谷えり子首相補佐官は会議後の講演で「国民会議で提言が出ながら実現できなかった。その穴埋めをするのが教育再生会議だ」と言い切った。
緊急提言を実施するならば、社会奉仕にせよ別教室にせよ、担任教師の他に指導者が必要で、予算措置も避けられない。教育界からは「PRに終わるのではないか」との声が出始めている。【竹島一登、高山純二】
◇いじめで自殺、遺族の反応「杓子定規じゃだめ」
長男(当時13歳)を亡くした長野県教委こども支援課長の前島章良さん(52)は「おおむね評価できる」とした。しかし、「いじめが100例あれば100通りの解決方法が必要になる。杓子(しゃくし)定規にいじめっ子を隔離しても問題は解決しない」と指摘する。
「『毅然とした対応』は当然のことだが、そうした態度を取れない現状こそが問題。『いじめられる側にも問題がある』という意識や事実解明を阻む学校の隠ぺい体質など、そうした風潮を変えていくことが重要だ」と話す。
長女(当時15歳)を亡くし、現在はいじめのない社会づくりを目指すNPO「ジェントルハートプロジェクト」理事を務める横浜市の小森美登里さん(49)は「罰のような形ではいじめた子どもは反省せず、また新たないじめを起こす。いじめた子どもに寄り添う視点がなければ、新たな暴発を生み、何の解決にもならない」と批判する。
教員の懲戒処分についても「先生も処分を受けるとなると罰が怖いので隠ぺいに拍車が掛かる。いじめの問題では目標数値を設定したり、評価をすべきではない」と苦言を呈した。
一方、日本教職員組合・高橋睦子副委員長は、「いじめ対策を取ろうとする方向性は良いが、対症療法でしかなく、いじめ問題の解決につながるか疑問」と話す。【佐藤敬一、川崎桂吾】
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◆いじめ問題への緊急提言の骨子
・いじめは反社会的な行為、見て見ぬふりも加害者
・指導、懲戒の基準を明確化し、毅然として対応
・守ってくれる人、必要とする人が必ずいるとの指導を徹底
・教育委員会はいじめに関与、放置、助長した教員を懲戒処分
・いじめがあった場合、校長以下でチームを作り学校として解決
・いじめを隠すことなく学校評議員、保護者らに報告
・家庭の責任も重大
・一過性の対応で終わらせず、政府が一丸となり取り組む
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◇出席停止を巡る委員らの見解◇
◇渡辺美樹・ワタミ社長
いじめは100%学校の責任だと思っている。いじめた人間を学校に来させないのは学校の責任の放棄。登校させて教育するのが、学校の役割だ。
◇陰山英男・立命館小学校副校長
出席停止にしても(停止された)子どもたちを誰が面倒を見るのか。教育的な視点を持って指導しなければ、根本的な解決にはならない。
◇義家弘介・横浜市教委教育委員
(提言に盛られた)「別教室での教育」は出席停止と同じこと。加害者に手を出さないと、被害者を安心させることはできない。
◇池田守男・資生堂相談役
出席停止が盛り込まれなかったのは、教育には愛情が必要で、あまり白黒つけるのはいかがなものかと私なりに理解している。
◇伊吹文明文科相
いじめ即出席停止という受け止め方をされて、現場で運用されることにはやや慎重でありたい。
毎日新聞 2006年11月30日 東京朝刊
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=main&NWID=2006113001000747
2006年(平成18年)11月30日
教育基本法改正成立へ 参院委で公聴会開催を議決
政府、与党が今国会の最重要法案と位置付けている教育基本法改正案の成立が30日、確実な情勢となった。改正案を審議している参院教育基本法特別委員会が同日夕、採決の前提となる地方公聴会の開催を全会一致で議決したため。教基法改正は1947年の制定以来初めてで、「公共の精神」などを強く打ち出した全面改定となる。
自民、公明の与党は、来週末以降の安倍晋三首相の外交日程を踏まえ、12月7日の特別委採決、8日の参院本会議採決・成立を目指しているが、中曽根弘文・教基法特別委員長が慎重姿勢を示しており、成立はずれ込む可能性がある。
自民党の矢野哲朗参院国対委員長は30日午後、民主党の郡司彰参院国対委員長と会談。教基法改正案の地方公聴会を12月4日に開催したいと提案したのに対し、郡司氏は「野党4党で協議したい」と即答を避けたが、最終的に参院特別委で新潟、長野、兵庫、徳島の各県で公聴会を行うことを全会一致で決定した。
参院特別委は22日の実質審議入りからほぼ連日、審議を続け、来週中には与党が目標とする70時間程度の審議時間に達する見通しで、与党は採決の環境は整ったと判断している。
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=IBR&PG=STORY&NGID=poli&NWID=2006113001000359
2006年(平成18年)12月 1日
教育委員会改革で法改正 首相「あるべき姿定める」
安倍晋三首相は30日午前、参院教育基本法特別委員会の集中審議で、教育委員会制度の抜本改革について「政府の教育再生会議でも議論している。多くの国民の意見を聞きながらあるべき教育委員会の姿を法律で定めていきたい」と述べ、教基法改正案の成立後に地方教育行政法など関連法の改正作業に着手したいとの意向を示した。
地方自治体の教育委員会をめぐっては、いじめ自殺への対応や必修科目の未履修問題を受け、その指導体制が疑問視され、教委の権限と責任の明確化を求める声が出ている。
また首相は、いじめ問題に関し教育再生会議がまとめた緊急提言を取り上げ、「提言を踏まえて何としてもいじめの連鎖を止めなくてはならないとの意識で取り組む」と、政府としていじめ防止策の推進に全力を挙げる考えを強調した。
民主党の鈴木寛氏への答弁。今回の集中審議は、政府が主催したタウンミーティングでの「やらせ質問」問題などをめぐる質疑で、教育基本法改正案の審議が停滞するのを避けるため、与党側が提案した。
http://www.asahi.com/politics/update/1130/007.html
ゆとり教育見直し提唱 教育再生会議第1分科会 2006年11月30日12時28分
安倍首相直属の教育再生会議の「学校再生分科会」(第1分科会)は30日、来年1月に打ち出す第1次報告の素案をまとめ、発表した。ゆとり教育の見直し、保護者らも参画した教員評価制の導入、教育委員会の見直しが柱。再生会議で今後、具体論を詰めるが、テーマによっては慎重論が出る可能性もある。
ゆとり教育の見直しについて、この日記者会見した第1分科会の白石真澄主査は、再生会議として「基礎学力をつけるには授業時間が足りないのではないか、という方向性は一致している」と述べた。素案には、1日7時間授業や夏休みの短縮などで授業時間を増やすことや、主要教科の授業を重点的に増やすことなどが検討事項として挙げられた。また、各学校が授業時間を決められるよう学校の権限を強化することも提唱している。
教員の評価については「校長や教委だけの目で行う現状を改め、保護者、学校評議員、児童・生徒などが参画した第三者評価を実施する」と明記。学校教育法を改正し、副校長や主幹という職を設けることで給与面などでメリハリをつけるとしている。教員免許に10年の有効期限を設け、30時間の講習を修了すれば更新できるとした今年7月の中央教育審議会の答申は不十分との認識を示し、「不適格教員を排除するためあらゆる制度を活用する」と強調。企業人などの社会人の大量登用も提言している。
一方、教委の見直しについては、教育委員に保護者の代表を任命することを地方教育行政法に明記することや、教育長は教員経験者に偏らないようにすることなどを視野に入れる。教委や学校を評価する第三者機関の検討も求めている。
http://www.asahi.com/politics/update/1130/001.html
教育再生会議「心の成長」策提唱 「30人31脚」など 2006年11月30日06時15分
安倍首相直属の教育再生会議の「規範意識・家族・地域教育再生分科会」(第2分科会)は29日、来年1月に打ち出す第1次報告の素案をまとめた。「子どもの『心の成長』のために」と題し、「家族の日」を創設し、家族一緒に夕食を取ることや、協力・助け合いの重要性を実感してもらうため体育の時間に「30人31脚」を行うことなどを提唱している。
家庭の日常生活や地域、学校での取り組みに、どこまで踏み込むことが許されるか、今後の焦点になりそうだ。
素案は8項目。郷土の歴史や伝統を学ぶ「ふるさとの時間」を授業に採り入れることや、学校で朝10分間の「読書の時間」を必ず設けることを提案。「家族の日」には「両親が子どもに読み聞かせをしたり、子守歌を歌ったりする」ことなども勧める。地域清掃などのボランティア活動も必ず行う、としている。
また、二人三脚を30人で行う「30人31脚」のほか、全国の小中学生が最高レベルの芸術を鑑賞する機会を与えること、いじめなどを題材とした演劇の鑑賞や演技を通じて「お互いの心の闇や過ち」を理解させることを提唱している。一方で、子どもに悪影響を与える番組を通報する窓口組織の新設も求めている。
生徒が学校の規律を乱した場合に、学校や教員が「ぶれない対応」をするため、全国共通の「ガイドライン」を設けることも提唱。「児童に授業を受けさせないという処置は、懲戒の方法として許されない」とした1948年の法務庁長官の見解についても、「実態を踏まえた見直し」を検討例として挙げている。いじめをした側の生徒に対する「出席停止」処分の積極適用に道を開くことを視野に入れたものだ。ただ、29日に開いた教育再生会議の総会では賛否が割れ、いじめ問題の緊急提言には盛り込まれなかった経緯がある。
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20061130AT3S3000F30112006.html
不適格教員の排除徹底・教育再生会議
政府の教育再生会議(野依良治座長)は30日午前、都内で学校再生を話し合う分科会を開き、指導力に問題のある不適格教員の排除を徹底する方針で一致した。具体策は今後、詰めるが、第三者による教員評価制度の実施や教員免許更新制の導入などが有力。一部委員から提案のあった教員免許を持たない社会人の登用なども検討する。 (16:01)
http://www.jtu-net.or.jp/
教基法徹底審議求め共同声明 4野党参院国対委員長(11月30日)
民主党、社民党、共産党、国民新党は30日、参院国対委員長会談を行い、教基法政府案について今国会で成立を急ぐ与党に対して、4野党で結束して慎重審議を求めるなどの共同声明で合意、発表しました。
※(以下共同声明全文)
教育基本法案は11月16日に参議院に送付され、11月22日から教育基本法に関する特別委員会にて議論が行われています。様々な観点から質疑が行われ、問題点が明らかになってきています。また、国民の大多数は、今国会での拙速な成立を望んでおりません。それにもかかわらず、与党は総理の外遊に合わせて法案を成立させようとしています。
衆議院の議論を通じて明らかになった、タウンミーティングにおけるやらせの問題や、いじめ、そして未履修の問題が解決したわけではありません。さらに、参議院のわずかな審議の中でも、各会派審議するべき重要課題は多数あることがわかりました。その中でも以下の点については野党4会派で共有できる重要課題だと考えています。
1.教育に個人の内心に係わる目標を法律で定めることはふさわしいのか。
2.不当な支配とは何か。
3.機能していない教育委員会制度や無責任な文部科学省等の教育行政をどのようにするのか等。
法案に関する審議は緒についたばかりです。私たち野党4会派は、引き続き参議院での徹底審議を求めていきます。
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コメント
この記事、私の記事の中にURLで紹介させてください。このURLを記した記事をTBさせていただきます。
投稿: star | 2006年12月 4日 (月) 09時04分
starさん、いつもコメントありがとうです。
色々な方からTBも多数頂き、感謝します。
教育基本法、共謀罪、防衛省、国民投票、この4点セットで、確実に「新しい戦前」に歩を進める政府与党。これに異議を唱え続ける必要性を強く感じます。
ネットから人へ、人から知人・友人へ、「自分たちのことは自分たちで考え、判断する」という社会を作る一助になれば、と思っています。
投稿: 寸胴 | 2006年12月 8日 (金) 00時21分